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大阪・関西万博への労働時間規制の適用除外を求めたことへの抗議声明を発出しました

 

大阪・関西万博への労働時間規制の適用除外を求めたことへの抗議声明

 

2023年8月3日

過労死弁護団全国連絡会議 代表幹事 弁護士 川人 博

同    弁護士 松丸 正

 2025年日本国際博覧会(以下「大阪・関西万博」という。)を主催・運営する公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(以下「博覧会協会」という。)が、2024年4月1日から建設業においても適用される時間外労働に関する罰則付きの上限規制(労基法36条6項2号・3号、附則139条2項)を、大阪・関西万博関連施設の建設については適用しないよう要望していたところ、政府内でも同旨検討がされていることを、本年7月28日、西村経済産業大臣が明らかにした。

 報道によれば、大阪・関西万博の準備の遅れが指摘される中で、時間外労働の上限規制が適用されると、「人繰りがさらに厳しくなるとの見方」(共同通信)「深刻な労働力不足が発生」(産経新聞)するためであるという。

 しかし、2017年3月には、東京オリンピックのメイン会場となった新国立競技場の建設工事に当たっていた新人の現場監督が、月190時間以上の時間外労働を行い、過労死するという事件も起きている。この事件は、新国立競技場のデザインが変更になる等によって工期がひっ迫し、超長時間労働を行わざるを得なくなることで生じたものであって、現在の大阪・関西万博と全く同様の構造であった。

 しかも、大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとして掲げ、概要資料中のトピック例として、「Saving Lives(いのちを救う)」のうちに「労働環境の改善」を明示しており、持続可能性に配慮した調達コードとして、「4.7 長時間労働の禁止 サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等において、違法な長時間労働(労働時間等に関する規定の適用除外となっている労働者については健康・福祉を害する長時間労働)をさせてはならない。」としているのである。

 そして、現在適用除外となっている労基法36条6項2号・3号は、「一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。」(2号)、「対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと」(3号)であり、脳心臓疾患の労災認定基準である「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(基発0914第1号令和3年9月14日)上、身体的負荷を伴う業務等の他の負荷要因を考慮せずとも、労働時間のみで労災認定がされ得る水準や、労安衛法上の面接指導を行うべきこととなるような(労安衛法66条の8第1項、労安衛則52条の2)時間外労働を禁じるものである。「労働力不足」を理由としてこの適用除外の延長を求めるということはすなわち、上限規制を超えたような時間外労働が発生することを許容し、労働者の生命・身体を危険にさらすことを許容することを意味する。

 このような時間外労働が許されないことは、大阪・関西万博の目的がどのようなものであろうが当然であり、また、前記の通り、自ら「労働環境の改善」を示すべきテーマとしており、調達コードを定めているものであるから、言語道断である。

 国連は、2011年に「ビジネスと人権」指導原則を採択し、その後、2015年にSDGsの17の達成目標が決定し、その中にはゴール8として「ディーセントワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)の達成が定められている。今回のような国際的行事において、長時間過重労働を労働者に課すことは、これら国連の原則・目標にも明白に違反するものである。 仮に、博覧会協会が求めるような労働時間規制の適用除外を行わなければ開催できないイベントであるというならば、開催を取りやめるほかはない。

 以上の通りであるから、長時間労働等を理由とする悲惨な事件に向き合ってきた当弁護団は、博覧会協会による上限規制の適用除外要望に対して最大限の強さをもって抗議するとともに、即時の撤回を求め、政府に対しても、このような要望に対しては直ちに許容できないことを表明することを求める。

以上  

また、併せて2020東京オリンピックのメイン会場となった新国立競技場の建設現場における過労死事件のご遺族からのコメントもご参照ください。
公開日時:2023年8月3日(木)

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