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「過労死防止基本法」制定の早期実現を

  1. 労働者の過重な業務による疲労の蓄積や業務に起因する極度の心理的負荷等によって脳・心臓疾患や精神障害を発症して生ずる労働災害である「過労死」が社会用語となって、四半世紀が経とうとしているが、過労死・過労自殺は減るどころか、いっそう広がりつつある。
    まじめで誠実な働き盛りの労働者が過労死で命を落としていくことは遺された家族にとっても、その労働者を雇用する企業及び事業所にとっても大きな損失であることは論を待たない。
  2. しかし、労働者はいくら労働条件が厳しくても、会社にその改善を申し出るのは容易ではなく、また、個別の企業が労働条件を改善したいと思っても、厳しい企業間競争とグローバル経済の中、自社だけを改善するのは難しい面がある。
    そこで、(1)過労死はあってはならないことを国が宣言し、(2)過労死をなくすための国・自治体・事業主の責務を明確にし、(3)国は過労死に関する調査・研究を行うとともに総合的な対策を行うことを柱とする「過労死防止基本法」の制定が必要である。
  3. 当連絡会議は、2008年9月の第21回総会において、「『過労死防止基本法』の制定を求める決議」を採択したが、この決議が契機となり、全国過労死を考える家族の会と当連絡会議の呼びかけで2011年11月18日、「ストップ!過労死 過労死防止基本法制定実行委員会」が結成され、実行委員会は「100万人署名」を中心とした世論喚起と、超党派の国会議員への働きかけの2つの取り組みを行ってきた。
    これまでに集約された署名数は30万を超え、世論を大きく広げつつある。
    また、国会への働きかけについても、実行委員会の前後を通じて、これまでに4回にわたって「院内集会」を開催し、衆参の厚生労働委員会の委員を中心に、超党派の多くの国会議員とつながりが広がりつつある。
  4. 国会をめぐる情勢は流動的であるが、当連絡会議は、この「基本法」の重要性と緊急性に鑑み、議員立法などによってこれを早期に制定することを強く訴えるとともに、過労死を無くす基本法を制定しようという一点で、多くの労働団体・市民団体と協同し、署名を更に広げて世論を喚起する運動の先頭に立っことを、ここに決意するものである。

2012年9月28日
過労死弁護団全国連絡会議 第25回総会



過労死防止基本法(案)

平成24年9月28日
過労死弁護団全国連絡会議 第25回総会

第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、近年、我が国において労働者の過重な業務による疲労の蓄積や業務に起因する極度の心理的負荷等によって脳・心臓疾患や精神障害を発症して生ずる労働災害である過労死が多発していること、また、まじめで誠実な働き盛りの労働者が過労死で命を落としていくことは遺された家族にとっても、その労働者を雇用する企業及び事業所にとっても大きな損失であることにかんがみ、過労死の防止に関する基本理念を定め、国及び地方公共団体並びに事業主等の責務を明らかにするとともに、過労死対策の基本となる事項を定めることにより、過労死防止対策を総合的に推進し、あわせて過労死のおそれがある労働者とその親族等に対する支援の充実を図り、もって仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この法律において「過労死」とは、過重労働によって心身の健康を損ねた結果生じる、脳・心臓疾患等の発症による死亡並びに精神障害等の発症による自殺をいう。

(基本理念)

第3条 過労死は、あってはならない。
2 過労死防止対策は、過重労働が過労死を招くことにかんがみ、過重労働が労働者の心身に与える影響や、ワーク・ライフ・バランスに関する調査研究も踏まえて実施されなければならない。
3 過労死防止対策は、国、地方公共団体、事業主団体、事業主、医療機関、過労死防止等に関する活動を行う民間の団体その他関係する者の相互の密接な連携の下に実施されなければならない。

(国の責務)

第4条 国は、前条の基本理念にのっとり、過労死防止対策を総合的に策定し、実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第5条 地方公共団体は、第3条の基本理念にのっとり、過労死防止対策について、国と協力しつつ、当該地域の労働状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有する。

(事業主の責務)

第6条 事業主は、第3条の基本理念にのっとり、国及び地方公共団体が実施する過労死防止対策に協力するとともに、その雇用する労働者の業務の遂行に伴って心身の健康を損なうことがないように必要な措置を講ずる責務を有する。

(事業主団体の責務)

第7条 事業主団体は、第3条の基本理念にのっとり、事業主の自主的な取組を尊重しつつ、労働者の生命・健康の維持・向上を図るための自主的な活動に努めるものとする。

(労働者の権利)

第8条 労働者は、労働時間、賃金、休日、休憩、休息、労働の内容などにおいて、個人の尊厳と心身の健康を損なわず、人間らしい生活を継続的に営むことができるような労働条件のもとで働く権利を有する。

(過労死防止対策啓発週間)

第9条 国民の問に広く過労死防止についての関心と認識を深めるため、過労死防止対策啓発週間を設ける。
2 過労死防止対策啓発週間は、毎年11月16日から同月23日までの1週間とする。
3 国及び地方公共団体は、過労死防止対策啓発週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

(過労死防止対策基本計画)

第10条 政府は、過労死防止対策の計画的な推進を図るため、過労死防止対策の推進に関する基本的な計画(以下「過労死防止対策基本計画」という。)を定めなければならない。
2 過労死防止対策基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
  一 長期的に講ずべき過労死防止対策
  二 前号に掲げるもののほか、過労死防止対策の計画的な推進を図るために必要な事項
3 内閣総理大臣は、過労死防止対策基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、過労死防止対策基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、過労死防止対策基本計画の変更について準用する。

(法制上の措置等)

第11条 国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行わなければならない。
2 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講じなければならない。

(年次報告)

第12条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死発生の概要及び原因並びに政府が講じた過労死防止対策の実施の状況に関する報告書を提出しなければならない。

第2章 基本的施策

(調査研究の推進等)

第13条 国は、過労死の防止に関し、調査研究を推進し、並びに情報の収集・整理・分析及び提供を行うものとする。
2 国は、前項の施策の効果的かつ効率的な実施に資するための体制の整備を行うものとする。

(理解の増進)

第14条 国は、広報活動等を通じて、過労死の防止等に関する事業主及び労働者の理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。

(医療提供体制の整備)

第15条 国は、過労死のおそれがある労働者に対し必要な医療が早期かつ適切に提供されるよう、必要な施策を講ずるものとする。

(労働者及びその親族等に対する支援)

第16条 国は、過労死のおそれがある労働者が過労死に至ることのないよう、当該労働者及びその親族等に対する適切な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする。

第3章 過労死防止総合対策会議

(設置及び所掌事務)

第17条 内閣府に、特別の機関として、過労死防止総合対策会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 過労死防止対策基本計画の案を作成すること。
 二 過労死防止対策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。
 三 前二号に掲げるもののほか、過労死防止対策に関する重要事項について審議し、過労死防止対策の実施を推進すること。

(組織等)

第18条 会議は、会長及び委員をもって組織する。
2 会長は、内閣官房長官をもって充てる。
3 委員は、厚生労働大臣、厚生労働副大臣、同政務官、その他内閣官房長官が指定する者をもって充てる。
 その他内閣官房長官が指定する者については、労働者(家内労働法(昭和四十五年法律第六十号)第二条第二項に規定する家内労働者を含む。以下同じ。)を代表する者、使用者(同条第三項に
規定する委託者を含む。以下同じ。)を代表する者及び公益を代表する者のうちから、内閣官房
長官が各1名を任命しなければならない。
4 会議に、幹事を置く。
5 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
6 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

附 則

(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。


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