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解決事例

労災認定

新国立競技場地盤改良工事 新入社員過労自死事件(2017年10月6日労災認定)

事案の概要:

 被災者は、平成28年3月、大学卒業(工学系)後、同4月、都内の建設会社に就職。各工事の施工管理業務に従事していたが、同年12月中旬頃から、新国立競技場地盤改良工事の施工管理業務に従事することになり、

 それ以降の極度の長時間労働・深夜労働・徹夜労働等の過重業務、業務上のストレスが原因となり精神障害を発病し(推定)、平成29年3月2日に突然失踪し、4月15日に長野県でご遺体が発見された。警察等関係機関によって調査のうえ、「3月2日頃に自殺」と判断された。

 平成29年7月12日に上野労基署に労災申請を行い、その後、手続きが新宿労基署に移送された。平成29年10月6日付で新宿労基署は、被災者の死亡を労災と認定した。

労災認定のポイント:

 労働局の専門部会は、2月頃から、慢性的な睡眠不足の状態となり、友人に悲観的なことを述べたり、身だしなみが乱れたりなどの状態が見られるとして、平成29年3月上旬、精神疾患(ICD-10にいうF3(気分障害))を発病していたと認定。

 また、労基署は、勤務報告書の労働時間は実態を反映していないとして、競技場出入口の入場・退場記録を元にして、関係者の証言も参考にして、失踪の前日まで直前1ヶ月(1/31~3/1)の時間外労働が190時間18分であり、極度の長時間労働と認定。

 なお、その前1ヶ月の時間外労働も160時間05分であったことも認定した。遺族主張(直前1ヶ月211時間56分、2ヶ月143時間32分)とやや異なるが、起算日が異なる等の事情による。

 これら長時間労働により被災者は精神疾患を発病し、これにより判断能力・行為選択能力が著しく減退し、自殺に至ったものと認定された。

 代理人や労基署の調査によって、勤務報告書の労働時間が実態を反映していないことが明らかになり、また、友人の証言等から精神疾患の発病を認定させたことが労災認定のポイントとなったといえる。

 本件では、申請時に記者会見を行う等により、大きな社会問題となる中、労基署が申請から約3ヶ月と迅速な労災認定を行ったことの意義も大きい

(担当弁護士:川人博(川人法律事務所)、山岡遥平(神奈川総合法律事務所))