NHK「カンテツな女」番組作りに関する申入書
代表世話人 寺西笑子
過労死弁護団全国連絡会議
代表幹事 松丸 正
日本放送協会
会長 福地茂雄 様
過労死を考える家族の会は,過労死・過労自殺により大切な人を失った家族等が,労災認定や,企業に対する損害賠償を通じてその救済を求めるとともに,ノーモアカローシのために長時間・過密労働をなくすために活動している団体です。
過労死弁護団全国連絡会議は,過労死・過労自殺の被災者・遺族の救済のため,過労死110番等の相談活動や,訴訟活動を全国的に行っている弁護団です。
貴局は「カンテツな女」と題して,完全徹夜で勤務をする女性の働き方,生き方を描いたドキュメンタリー番組をシリーズで放映しています。
2010年2月16日深夜に放映された番組では,午後2時に出勤し,チラシ広告での営業や開店準備を始め,夕食は仕事が一段落した深夜に休憩室でかき込み,翌朝7時退勤の1日19時間の勤務をする居酒屋女性店長の姿を描いています。
女性の力強い生き方に感動しつつも,いつ心身の健康を損ねてもおかしくない,食事のための時間以外は休憩なしに1日19時間という,常軌を逸した長時間の夜勤の働き方に無批判な番組作りについては,大切な人を過労死・過労自殺で失った遺族や,その弁護団としても疑問を呈さざるを得ません。
過労死・過労自殺の多くは,長時間・夜勤労働のなかから生じていることについては,貴局も報道を通じて充分理解されているものと考えます。
長時間の夜勤で心身の健康を損ねることはないのか,最低限度の労働条件を定めた労働基準法等の法令に違反した働き方ではないのか,仕事と家庭の調和(ワーク・ライフバランス)からの問題はないのか,等について考慮したうえでの番組作りであったのでしょうか。
今後もこのシリーズは続くとのことですが,長時間・夜勤の勤務を前提とした生き方を一方的に礼賛するような番組作りについては,一考されるよう強く求めます。
また,「カンテツ」な勤務から生じる過労死・過労自殺等の健康障害や,ワークライフバランスの問題等,このような働き方の負の側面を照らし出した番組作りもされるよう要望いたします。