精神障害労災認定基準に関する意見書
精神障害労災認定基準に関する意見書
厚生労働大臣 細川 律夫 殿
当弁護団は、1988年の結成以来、社会問題となっている「過労死」問題の社会的救済のため、全国的に過労死弁護団を組織して取り組んできました。しかし、長時間、過密労働による過労を原因として自ら命を絶つ労働者の数は、労災と認定された件数はもちろんのこと、労災保険給付支給の請求をした件数に比べてもはるかに多いのが実情です。労災認定がなされた数は、過労死問題の本当に氷山の一角に過ぎません。この陰には、自殺しても労災保険給付支給の請求を諦めている被災者、遺族、家族が極めて多いのが現状です。これまでに想像を絶する多数の被災者、遺族、家族が、不十分な労災認定基準のために切り捨てられ、苦しい生活を余犠なくされてきました。
ところで、貴庁は、昨年10月15日、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を立ち上げ、従来の業務上外判断指針から労災認定基準の制定に向けて議論されています。発病後の心理的負荷を評価するなど補償対象を拡大する面もありますが、あくまで目的は精神障害の労災認定の迅速化・効率化にあります。
当弁護団は、2004年と2009年に業務上外判断指針の改定に関する意見書を提出しており、過重負荷評価基準、慢性ストレスの評価、複数の出来事の総体評価、時間外労働時間数、過重負荷の評価期間、発病後の心理的負荷による増悪について意見を述べてきました。2009年11月18日付け意見書は専門検討会でも配布されていますが、現状は必ずしも当弁護団の意見を十分に考慮いただいておりません。
そこで、当弁護団は、あらためて従前の意見を取り込んだ労災認定基準を制定することを求めるとともに、これまで意見を述べてこなかった療養、治癒、再発について下記のとおり意見を述べるものです。
過労死弁護団全国連絡会議 代表幹事 岡村 親宜
同 水野 幹男
同 松丸 正