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いわゆる脳心臓疾患の労災認定認定基準改定についてコメントを出しました

 

「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(基発0914第1号 令和3年9月14日)について

 

 

2021年9月14日

過労死弁護団全国連絡会議(連絡先)

担当弁護士 玉木03-3234-9137

平本 03-5919-1194

 

 令和3年9月14日、脳・心臓疾患の労災認定基準が改正された(以下「新認定基準」という)。過労死弁護団全国連絡会議としては、新認定基準の内容はいぐつかの点について改善された内容を含んでいるが、医学的・科学的知見や判例等に照らしても、また、切実な被害者救済や職場改善の観点からみても、今回改善されずに終わってしまった部分が多い。したがって、当弁護団は、引き続き必要な改正を求めていくものである。

1 業務と発症との関連性が強いといえる労働時間数については、改正前の基準が維持され、いわゆる過労死ラインは時間外労働時間月80時間のままとされている。

  しかし、医学的知見によれば、週55時間の労働(おおむね月60時間の時間外労働)が虚血性脳疾患・心疾患の発症と強い関連性を有するといえることから、発症と強い関連性を有する労働時間数は週55時間(おおむね月65時間)として、現在の過労死ラインを時間外労働時間月80時間から65時間に変更すべきである。

  もっとも、新認定基準が、過労死ラインの水準には至らなくとも、「これに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること」と明記したことは、重要な改正であり評価できる。

  また、新認定基準は、「労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮するに当たっては、労働時間がより長ければ労働時間以外の負荷要因による負荷がより小さくとも業務と発症との関連性が強い場合があり、また、労働時間以外の負荷要因による負荷がより大きければ又は多ければ労働時間がより短くとも業務と発症との関連性が強い場合があること」を明記した。この点も、重要な改正であり、今後の認定実務において適切な総合評価がなされるよう、全国の労働基準監督署に周知徹底していく必要がある。

2 労働時間以外の負荷要因については、新たに休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、身体的負荷を伴う業務等が追加され、各負荷要因の検討の視点が具体化したこと、及び、心理的負荷を伴う業務の評価対象が拡大した点などは、当弁護団の意見が取り入れられた部分であり、評価できる。

  もっとも、各負荷要因に関する検討の視点はあくまで一例であり、これら検討の視点に限定することなく、適切な総合評価をおこなっていく必要がある。また、評価期間についても、発症前おおむね6か月間のみ評価することを原則とするのではなく、それ以前の期間を含む全体の業務内容を考慮すべきである。

3 新認定基準は、令和3年9月15日から施行されるが、特に労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮するケースについては、原処分庁が改正前の業務外決定について見直しを検討した上で、業務と発症との関連性が強いと評価できる場合には自庁取消をする取扱いにすべきである。

4 認定基準の直接の内容ではないが、現在労災認定の実務においては、労働時間の過少認定が頻繁に行なわれ、結果として業務外決定につながる事例が増えている。認定基準が適切に運用されるためには、労働時間を適正に認定することが不可欠であり、この点での改善が強く求められる。

以  上

公開日時:2021年9月15日(水)

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